産廃処理業の許可制度の法的根拠と違反時の罰則
罰則の条文は、委託する側(排出事業者)に向いたものと、受託する側(処理業者)に向いたものが同じ条に混ざっています。どの規定が自社に向いているかを条文番号ごとに切り分けます。
この記事の結論
- 許可の根拠は廃棄物処理法第14条第1項(収集運搬業)と第6項(処分業)です
- 無許可営業と、無許可業者への委託は同じ第25条第1項に置かれ、法定刑は 5年 以下の拘禁刑もしくは 1,000万円 以下の罰金、またはその併科です
- 罰則がかからない場合でも、排出事業者には第19条の6の措置命令が及ぶことがあります。委託基準を守っていても対象になり得る点が要注意です
許可の根拠は第14条、更新期間は施行令
産業廃棄物の収集運搬を業として行おうとする者は、その区域を管轄する都道府県知事の許可を受けなければなりません(法第14条第1項)。処分を業として行おうとする者も同じく都道府県知事の許可が必要です(同条第6項)。
いずれの許可も、5年を下らない期間であって政令で定める期間ごとに更新を受けなければ、期間の経過によって効力を失います(同条第2項・第7項)。その期間を定めているのが施行令第6条の9と第6条の11で、新規は5年、優良と認められた更新は7年です。
条文の構造としては、「業を行う側の許可」と「委託する側の義務」が別の条に置かれています。委託する側の義務は第12条にあり、罰則の条文はこの両方を同じ条番号の中で参照しています。ここが読みにくさの原因です。
法定刑の一覧(条文番号つき)
軸 01重い順に並べた法定刑条文の表記は「拘禁刑」
| 条文 | おもな対象行為 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 第25条第1項 | 無許可営業(第1号)/無許可業者等への委託(第6号)/不法投棄(第14号)/改善命令・措置命令違反(第5号) | 5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその併科 |
| 第26条 | 委託基準(政令で定める基準)に違反した委託(第1号)/第19条の3等の命令違反(第2号) | 3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその併科 |
| 第27条の2 | 管理票(マニフェスト)の不交付・記載漏れ・虚偽記載・写しの不送付・不保存など | 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 |
| 第30条 | 帳簿の不備(第1号)/産業廃棄物処理責任者・特別管理産業廃棄物管理責任者の不設置(第5号)/立入検査の拒否(第8号) | 30万円以下の罰金 |
| 第32条 | 両罰規定。第25条第1項第1号〜第4号、第12号、第14号、第15号等については法人に重い罰金刑 | 法人に3億円以下の罰金刑(それ以外は各本条の罰金刑) |
出典e-Gov法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(2026年8月11日確認)
条文の刑名は「拘禁刑」と表記されています。古い解説記事では「懲役」と書かれていることがありますが、現行の条文をe-Gov法令検索で開くと拘禁刑になっています。数字(年数・金額)は変わっていません。
委託する側にかかる条文だけを抜き出す
排出事業者が押さえるのは次の4つです。いずれも第12条の各項が起点で、罰則条文がそれを参照する形になっています。
| 義務の条文 | 内容 | 違反したときの条文 |
|---|---|---|
| 第12条第5項 | 運搬は産業廃棄物収集運搬業者に、処分は産業廃棄物処分業者に委託する | 第25条第1項第6号 |
| 第12条第6項 | 委託するときは政令で定める基準(書面契約・法定記載事項・許可証の写しの添付など)に従う | 第26条第1号 |
| 第12条の3 | 管理票(マニフェスト)の交付・回付・保存 | 第27条の2 |
| 第12条第7項 | 処理状況の確認と、適正な処理のために必要な措置を講ずる努力義務 | 罰則なし(第19条の6の判断材料) |
出典e-Gov法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」/環境省「排出事業者責任に基づく措置に係るチェックリスト」(2026年8月11日確認)
第12条第7項は努力義務なので、これ自体に罰則はありません。ただし後述の措置命令の要件に組み込まれているため、「努力義務だから何もしない」という整理はしにくい条文です。
罰則より先に届くのが措置命令
不適正な処理が起きたとき、行政が最初に動かすのは罰則ではなく命令です。
第19条の5は、産業廃棄物処理基準に適合しない保管・収集・運搬・処分が行われ、生活環境の保全上の支障が生じ、または生ずるおそれがあるときに、都道府県知事が処分者等に対して支障の除去等の措置を命ずることができる規定です。ここでいう処分者等には、委託基準に違反する委託をした者や、マニフェストの義務に違反した者も含まれます。
さらに第19条の6は、処分者等だけでは支障の除去等が十分でない場合に、排出事業者等に対して命令を出せる規定です。その要件の1つが「排出事業者等が当該産業廃棄物の処理に関し適正な対価を負担していないとき、当該収集、運搬又は処分が行われることを知り、又は知ることができたとき」です。
環境省のチェックリストは、適正な対価を負担していない場合を「一般的に行われている方法で処理するために必要とされる処理料金からみて著しく低廉な料金で委託する場合」と説明し、地域における一般的な処理料金の半値程度またはそれを下回る料金で委託している場合は、その料金に合理性があることを示せない限り適正な対価を負担していないことになると記載しています。また、合理的な理由なく処理料金を把握するための措置(複数の処理業者の見積もりをとる等)を講じていない場合にも、措置命令の対象になる可能性があるとしています。
不法投棄の新規判明件数
罰則の条文が実際にどれくらいの事案に向き合っているかは、環境省が毎年公表している不法投棄の状況から読めます。
出典環境省「産業廃棄物の不法投棄等の状況」各年度報道発表(令和6年度は2025年12月19日公表)
令和6年度の新規判明事案は106件、投棄量は1.4万トンでした。実行者の内訳は、不明を除くと排出事業者が35件(33%)で最も多く、投棄量では8,843トン(61.4%)を占めます。廃棄物の種類では、がれき類32件(30.2%)と建設混合廃棄物32件(30.2%)が同数で最多でした。
投棄した業者だけでなく、排出した側が実行者として数えられている件数がこの規模である点が、第19条の6が置かれている理由につながります。
よくある質問
無許可の業者に委託した場合、委託した側も罰せられますか。
廃棄物処理法第25条第1項第6号は、第12条第5項の規定に違反して産業廃棄物の処理を他人に委託した者を対象としています。同項の法定刑は5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその併科です。
法人にも罰金がかかりますか。
第32条の両罰規定により、法人の従業者等が業務に関して違反行為をしたときは、行為者を罰するほか法人にも罰金刑が科されます。第25条第1項第1号から第4号まで、第12号、第14号、第15号などは法人に3億円以下の罰金刑と定められています。
マニフェストの不交付や保存漏れはどの条文ですか。
第27条の2です。管理票を交付しない、必要事項を記載しない、虚偽の記載をする、写しを保存しないなどの行為が列挙され、法定刑は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。
この記事で解決しないこと
- 個別の事案が違反にあたるかどうかの判断はしません。条文と法定刑の対応だけを整理しています
- 量刑の見通しや、行政処分の実際の運用(自治体ごとの判断)は扱いません
- 契約書の文面が条文の要件を満たしているかどうかの評価は、法律の専門家の領域です
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参照した資料
資料 e-Gov法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(昭和45年法律第137号) (第12条、第14条、第19条の5、第19条の6、第25条〜第30条、第32条(2026年8月11日確認))
資料 e-Gov法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令」(昭和46年政令第300号) (第6条の2、第6条の9、第6条の11(2026年8月11日確認))
資料 環境省「排出事業者責任に基づく措置に係るチェックリスト」(平成29年6月・令和5年3月一部改訂) (委託基準・措置命令の解説)
資料 環境省「産業廃棄物の不法投棄等の状況(令和6年度)について」 (2025年12月19日公表)
資料 環境省「産業廃棄物の不法投棄等の状況(令和5年度)について」 (2024年12月6日公表)
資料 環境省「産業廃棄物の不法投棄等の状況(令和4年度)について」 (2023年12月8日公表・令和3年度の件数を併記)
資料 環境省「排出事業者責任の徹底について」 (関係通知の一覧)